
森本 敏の国際観・国家観と政策課題
冷戦終焉後18年がたち、未だに冷戦後秩序は未構築のままである。この間、米国の一極世界が広がっているが、米国はイラク戦争という歴史的過誤のためにイスラム世界など途上地域の多くに反米主義の広がりをもたらし、米国の相対的な国力低下は避けられない状況にある。しかし、国連は十分機能せず、地域主義も進展が遅れ、中・ロ両国は協調体制をとって米国の一極覇権に対抗している。一方、アジアには朝鮮半島・中台関係など冷戦期における負の遺産が残っており、地域機構の構築も進まず、独裁国家や社会主義国家が残存するなど他地域には見られない不安定要因が存在する。
我が国は戦後、米国との同盟関係を選択して経済発展にその資産を投入し、国家の安定と繁栄を確保してきた。この選択は適切なものであったが、これにより失ったものも多く、この戦後社会における負の遺産を如何に解消して将来における国家発展を導くかが改革の本義である。
外交面では日米同盟を基軸として価値観を共有する諸国家との協調関係を重視しつつ、中国・韓国・アセアンなど近隣諸国との良好な関係維持に努めている。また、途上諸国の開発と成長を助成し、地域的安定を増進することは我が国の国益に直結する政策でもある。しかし、我が国の外交に欠如しているのは総合的な見地からの外交戦略がないということであり、このためには国家安全保障会議を設置して対外政策と国内政策の諸政策を総合的に調整すべきである。
防衛面では冷戦後に国際協力活動や国内災害救援活動が広がっているものの、防衛力については周辺からくる脅威の低減により、削減傾向にある。また、自衛隊を領域外において活動させる場合には、憲法及び憲法解釈から武力行使・武器使用などに大きな制約要因があり、これらを解決することが出来れば、防衛力の役割と任務に大きな変化が生じるであろう。
安全保障面では当面する日米同盟関係の中で、特に、米軍再編、ミサイル防衛、HNS(接受国支援)特別協定、インド洋における補給支援、イラクにおける航空補給支援、や情報管理、次期戦闘機、日米RMC(任務・役割・能力)協議に基づく役割分担など課題は多い。
北朝鮮の核開発・ミサイル開発・拉致問題も最重要課題である。6カ国協議により北朝鮮の核問題が解決しうるかどうかが問題の焦点である。また、長期的には中国との安全保障関係は国家最大の安全保障問題である。中国軍の海・空軍力近代化や海洋における活動、核戦力近代化、宇宙兵器開発も懸念材料である。こうした国家の安全保障政策問題には高度な情報機能と政策立案・政策調整機能が不可欠であり、こうした総合機能を発揮できるようにしなければならない。







